Back to matchesWe found a matchYour institution may have access to this item. Find your institution then sign in to continue.Title中世ウェールズにおける窃盗裁判 -法慣習と人々の認識.Authors永 井 一 郎Abstract本稿で私は,「ウェールズ法」の窃盗関連規定の検討を通じて 12 世紀以前のウェールズ社会の一 側面を明らかにしたいと考えている。 現存の「ウェールズ法」は 4 つの版に分類されていて,それぞれ 12 世紀末から 13 世紀後半の間 に編纂されたと推定されている。しかし,同法はこの時期に全く新しく立法されたのではなく,む しろ多くの規定が既存の法規範を基に成文化されたものであることが分かっている。本稿はこうし た古い法規範を法慣習と呼んでいる。 検討作業は次の 3 点である。 (1)窃盗裁判の規定を検討し,そこから 12 世紀以前の法慣習に基づく窃盗裁判の在り方を探る。 (2)古い窃盗裁判の背後に潜む窃盗に関する人々の認識を推測する。 (3)12,13 世紀のウェールズ人支配者たちが定めた窃盗防止・処理の方法を確認し,これと住 民が持ち続けていた窃盗認識とのずれを探る。 最後に「付論」では,上記のずれに着目して,なぜギラルドゥス・カンブレンシスがウェールズ 人はみな盗人であると酷評したのか,ひとつの仮説を提示する。PublicationKokugakuin University Economics Review / Kokugakuin Keizaigaku, 2024, Vol 72, Issue 2, p61ISSN0288-6340Publication typeArticle